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こんにちは。ANGEL VIBESです。前回の続きです。
前回までのお話では、Adobe Illustrator CC(もしくはCS6)の「Presets」フォルダ内の「カラーブック」フォルダに、旧バージョン(CS2から5のバージョン)の初期設定書類「PANTONE solid coated.acbl」を配置するところまでたどりつきました。これでもう、準備は整いました。Adobe Illustratorを開けば、「メニューバー」→「ウィンドウ」→「スウォッチライブラリ」→「カラーブック」から、旧・特色「Pantone Solid Coated」が選択できるようになっています。
ところで、「PANTONE+」×「Lab値」と「PANTONE」×「CMYK値」の色味ですが、どれくらい変わったか気になりませんか? 今回は、実際に「PANTONE+」と「PANTONE」の色味やCMYK置き換え色を比べてみたいと思います。

 

「PANTONE+」×「Lab値」と「PANTONE」×「CMYK値」の色味、CMYK置き換え色を比べてみました

PANTONE 115Cのナンバー色を例に、「PANTONE+」×「Lab値」と「PANTONE」×「CMYK値」の色味、CMYK置き換え色を比べてみます。

まず、「PANTONE+」のPANTONE 115C、「Lab値」 です。

見た目の色味はちょっと黒ずんでますね。レーザープリンタでプリントアウトしても、この黒ずみは残ります。

「PANTONE+」のPANTONE 115C、「Lab値」

そして、CMYKに置き換えると、C5.62+M17.9+Y84.4。

「PANTONE+」のPANTONE 115C、CMYK置き換え色

今度は、「PANTONE」のPANTONE 115C「CMYK値」です。
デフォルトでは、「Lab値」 のままなので、「スウォッチ」→「特色」を開いて、設定を「CMYK値」に変えます。
「PANTONE+」×「Lab値」のPANTONE 115Cよりも、見た目の色味はクリアですね。レーザープリンタでプリントアウトしても、このクリアさは保たれます。

旧「PANTONE」の PANTONE 115C、「CMYK値」

そして、CMYKに置き換えると、M9+Y80。
CMYKで見るとはっきりしますが、シアンが入らないこともあって、「PANTONE+」×「Lab値」にある濁りが解消されています。

旧「PANTONE」のPANTONE 115C、CMYK置き換え色

一目瞭然ですね。「PANTONE+」×「Lab値」よりも「PANTONE」×「CMYK値」の色味の方がくすみがなくなり、クリアです。選ぶナンバー色によっては、それほど色味に差が出ない場合もありますが、PANTONE 115Cなどは色味の違いは大きいですね。

 

「PANTONE solid coated.acbl」を配置するとなぜか…

さて、この作業、やってみると気が付かれる方もおられると思いますが、「PANTONE solid coated.acbl」を配置することで、「PANTONE+」であっても、「スウォッチ」ウィンドウの「特色オプション」で設定を「プロセスブックの CMYK 値を使用」に変えることができるようになります。私の環境で確認できただけなので、それができないMacもあるかもしれませんし、なぜできるようになるかについても不明ですが。この辺りはAdobeさんに伺ってみたいところです。調べきれずに恐縮です。

 

あくまで自己責任となりますが

3回に渡って「カラーブック」に追加する方法をご紹介してきた、この旧・特色「Pantone Solid Coated」ですが、使用するには少々注意が必要です。
Illustratorで、旧・特色「Pantone Solid Coated」を使用して作成したデータを、ご自分だけで使うのは良いとして、他の方と共有したりクライアントに納品したりとなると、考えるべき部分も生じます。
他の方とデータを共有するならば、相手の方と環境を揃えなければ、データを使用する際にエラーが起こるなどトラブルになることがないとは言えません。なので、あくまで自己責任での使用を。ということになります。
とはいえ、くすみがないせっかくの「Pantone Solid Coated」。トラブルを回避して使ってみたいですね。
それなら、「カラーブック」から選んだナンバー色をCMYKに置き換えてスウォッチに登録し直して使うという手段があります。例えば、PANTONE 115Cなら、CMYKに置き換えるとM9+Y80になりますが、これをスウォッチに登録して使うということです。これは、普通のCMYK色を登録して使うのと変わりありません。
私の周りの限りですが、この手段では問題は起こっていません。ただし、念のために「カラーブック」から選択した時にスウォッチに登録されたのスポットカラーは、削除しておくのがベターではあると思います。

 

まとめ

  • 「PANTONE+」×「Lab値」と「PANTONE」×「CMYK値」の色味を比べると、やはり「PANTONE」×「CMYK値」の方がクリア
  • 選択した旧「Pantone Solid Coated」はCMYK色に置き換えてスウォッチに登録し直すのがベター
  • 選択の際に登録された、スポットカラーの旧「Pantone Solid Coated」は削除するのがベター

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回の続きです。
Adobe Illustrator のバージョンCS6以降の、特色PANTONEのくすみが気になりませんか? というお話をしてきました。ですが、特色PANTONEは「Pantone」から「Pantone+」に新しくなり、「Pantone+ Solid Coated」を使おうとするなら、「Lab値」から「CMYK値」に定義を変えられず、そういった「くすみ」問題から逃れられないということでしたね。
今回は、カラーブックに、旧・特色「Pantone Solid Coated」を追加する方法があるので、そのご紹介をしてみたいと思います。

 

「Pantone+ Solid Coated」では本当に「CMYK値」で定義できないのか?

前回にちょっと触れましたが、「Pantone+ Solid Coated」は、本当に「CMYK値」で定義できないのかどうか、実際に試してみます。
「スウォッチ」ウィンドウの「特色オプション」では、確かに「Lab値」から「プロセスブックの CMYK 値を使用」に変更することができます。「スウォッチ」ウィンドウの右上端のメニューから「特色」を選ぶと「特色オプション」画面が表示されます。デフォルトでは「指定されたブックの Lab 値を使用」になっていますので、その下にある「プロセスブックの CMYK 値を使用」を選択します。すると特色オプションの設定は、「プロセスブックの CMYK 値を使用」になります。しかし、これで、「カラー」ウィンドウに「Pantone+ Solid Coated」が表示されている時に、「Lab値」を示すアイコンが「CMYK値」アイコンになるのかどうか。

「特色オプション」画面、「プロセスブックの CMYK 値を使用」を選択

 
しかし「Lab値」を示すアイコンのまま変わりません。

「Lab値」を示すアイコン

やってみましたが、ダメでした。「特色オプション」は「プロセスブックの CMYK 値を使用」を選択できるにはできます。しかしアイコンは「Lab値」のままです。

前回もご紹介しましたが、Adobeのサイトでも説明がされているように、「Pantone Plus スポットカラーをドキュメントスウォッチに追加するには、「Lab値」を使用してスポットカラーを定義します。」ということなので、「CMYK値」のアイコンにはならず、その再現色も「Lab値」によって定義された色になってしまいます。
「CMYK値」を使用するなら、やはり、カラーブックに旧・特色「Pantone Solid Coated」を追加するしかないということです。

 

カラーブックに旧・特色「Pantone Solid Coated」を追加してみましょう

カラーブックに旧・特色「Pantone Solid Coated」を追加する方法ですが、実はAdobeのサイトでも紹介があります。この方法を参考に、旧・特色「Pantone Solid Coated」が追加できるのか、実際にやってみます。
その方法です。MacのHDには、「アプリケーション」フォルダがありますね。このフォルダにあるAdobe Illustrator CC(もしくはCS6)の書類フォルダに、旧バージョン(CS2から5のバージョン)の書類を拾って配置します。
Adobe Illustrator が開いているなら、まずは終了します。そして、「Adobe Illustrator CC」フォルダ→「Presets」フォルダ→「ja_JP」フォルダ→「スウォッチ」フォルダ→「カラーブック」フォルダ、まずここまでたどり着きます。ここに、旧バージョンの初期設定書類、「PANTONE solid coated.acbl」を配置します。「PANTONE solid coated.acbl」は、旧バージョンの同じフォルダ、すなわち「カラーブック」から拾います。なお、Adobe Illustrator CCの「カラーブック」フォルダには、「以前のカラーブック」というフォルダがあるので、ここに配置しても良いでしょう。
これでOKです。Adobe Illustratorを開けば、「メニューバー」→「ウィンドウ」→「スウォッチライブラリ」→「カラーブック」に、旧・特色「Pantone Solid Coated」が追加されていますので、選択して使ってみましょう。

「PANTONE solid coated.acbl」を配置しました

次回は、実際に「PANTONE+」と「PANTONE」の色味、CMYK置き換え色を比べてみたいと思います。

 

まとめ

  • 「Pantone+ Solid Coated」でも「プロセスブックの CMYK 値を使用」は選択できる
  • しかし、「カラー」ウィンドウではアイコンは「Lab値」のまま
  • 旧バージョンの「PANTONE solid coated.acbl」をカラーブックに配置すれば旧バージョンの「PANTONE solid coated」が使える

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。
Adobe IllustratorのバージョンCS6以降を使用されている方の中で、カラー指定の時の特色PANTONEのことで、悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
特色PANTONE「Solid Coated」の再現色の印象が、変わっちゃったと感じる方もいらっしゃるようです。「くすみが出るようになったね」などという声もチラホラ。
カラーレーザープリンタでプリントアウトすると、同じナンバーの特色でも、CS6以降とそれ以前とでは確かに色味に差が出る色がありますよね。
商品や実際の刷り上がり印刷物では、もちろん指定したナンバーの特色になります。でも、クライアントに見せるラフ画やカンプをレーザープリンタでプリントアウトした状態で見せる時だってあります。そんな時は実際のインキの色は再現色になってしまうので、ちょっと困ってしまいますね。

 

イラレでPANTONE「Solid Coated」のカラー指定をする時って?

Adobe IllustratorでPANTONE「Solid Coated」のカラー指定をする時とは、つまりこういう時です。
オブジェクトのカラーは特色を指定することができるわけですが、「スウォッチライブラリ」の「カラーブック」からPANTONE「Solid Coated」のウィンドウを表示して色指定する時のことです。
「メニューバー」→「ウィンドウ」→「スウォッチライブラリ」→「カラーブック」から、「Pantone+ Solid Coated」を選ぶと「Pantone+ Solid Coated」のウィンドウが出てきます。オブジェクトにPANTONE「Solid Coated」のカラーを指定する時には、このウィンドウに並ぶ色のマスの中から指定したい色を選ぶことになります。

「Pantone+ Solid Coated」のウィンドウから色を選択します

 

PANTONE「Solid Coated」の再現色の色味がくすむようになった

CS5までのバージョンとCS6以降でのPANTONE「Solid Coated」再現色の印象を比べて、「全体的にくすむようになった」「濁りが出るようになった」という声は、私自身、デザイナーの方から聞くことがあります。私も同じ印象を共有しています。
その要因は、CS6以降のスポットカラーについての仕様の変化によるものです。
特色PANTONE色(Illustratorでは、CMYK4色掛け合わせではなく1色のインキ単独で出来ている特色は「スポットカラー」と表されますが)は近似色で再現されますが、「Lab値」の再現色は「CMYK値」の再現色より濁った色味となっているにもかかわらず、
①スポットカラーを使用する際のデフォルトの設定が、「CMYK値を使用」に替わり「Lab値を使用」になった。
②CS6以降に標準となった「Pantone+(Pantone Plus、パントンプラス)」のスポットカラーは、「Lab値」による定義が前提になった。
こうした仕様の変化が、PANTONE「Solid Coated」再現色の色味に変化をもたらし、ひいては彩度の変化をももたらしています。

 

「Pantone+ Solid Coated」をスウォッチに追加すると「Lab値」で定義されることになる

「Pantone+ Solid Coated」は、表示した「カラーブック」のウィンドウから色を選択する時点でスウォッチに登録されます。その際、自動的に「Lab値」で定義されることになります。これは、Adobeのサイトでも詳しい説明がされています。

https://helpx.adobe.com/jp/illustrator/kb/pantone-plus.html

「Pantone Plus Series® のスポットカラーは、「Lab値」を使用します。Pantone Plus Series® のスポットカラーにCMYK定義はありません。したがって、Pantone Plus スポットカラーをドキュメントスウォッチに追加するには、「Lab値」を使用してスポットカラーを定義します。」

…との説明がありますが、
要するに、「Pantone Plus Series® 」は「Pantone+」の10個のバリエーションのことで、この中のスポットカラーはスウォッチに登録される際には「Lab」値によって定義され、「CMYK値」による定義はされない仕様になったということです。
なので、CS6以降は「カラー」ウィンドウの、「Lab値」を示すアイコンは、設定を変えてみようとも「CMYK値」アイコンにならないというわけです。「Pantone+ Solid Coated」を使おうとするなら、「Lab値」から逃れられない。そんなわけです。

「Lab値」を示すアイコン

「Pantone+ Solid Coated」のくすみ、気になりませんか? カラーブックに特色の旧「Pantone Solid Coated」を追加する方法はあります。ただ、ちょっと注意が必要ですが……。

そのお話は次回に!

 

まとめ

  • CS6以降のPANTONE「Solid Coated」の再現色は「Lab値を使用」がデフォルト
  • CS6以降のPANTONEのスポットカラーは、「Lab値」による定義が前提になった
  • PANTONEのスポットカラーの「Lab値」再現色は、「CMYK値」の再現色より全体的にくすんだ色味

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回の解説で、特色を用いることで表現の幅が広がることは解っていただけたと思います。
では、そもそも「特色」とは何か? どんな役割を担っているのか? デザインの実務の視点から、もうちょっと説明をしておこうかと思います。

 

「特色」とは?

「特色」とは、単色1つ1つに色番号が割り当てられている印刷用の単色インキ(インキ=インク。古い人間なのでインキと言ってしまいます。)で、体系化されたカラーシステムとなっています。色見本が作られていて、見本帳やカラーチップにまとめられています。
オフセット印刷のCMYK4版掛け合わせでは再現できないけれど、特色でなら再現できるよ、なんていう色もあります。前回説明したように、彩度が保持されたエメラルドグリーンもそうです。
私は年賀状を毎年デザインしていますが、特色のお世話になっています。下の画像の「2018」「Happy New Year」には金色の特色を使いました。DIC - 620です。
画像では茶色っぽく見えていますが、実際にはキラキラしたインキです。このキラキラがあるとなしとでは、ずいぶん印象が変わります。
 

2018年の年賀状です

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特色の用途

特色の用途ですが、まずはインキとしての用途があります。印刷に用いられます。
オフセット印刷のCMYK4版掛け合わせで再現できない部分を特色にしてみたりする他、特色とスミ(ブラック)の2版で印刷をするなどという例もあります。
他には、インキとして用いるというより、その体系化されたカラーシステムを利用して指標として役立てることもあります。実際のデザインワークにおいては、こちらの用途もかなり占めていると思います。
グッズを作る時の工場への指示書などにおいては、色指定があります。この部分の生地色は「Pantoneの○○番」などと指定します。「この指定色に近い色の生地にしてください」、あるいは、「この指定色に生地を染めてください」などというふうに。このように、印刷インキとして役立てる他、色の指標として参照してもらうために使う場合もあるのです。
特色は、デザインの現場で色についての情報伝達をする際の、共通コードとして成り立っているということです。今や、デザインワークに無くてはならない必要不可欠なツールです。

 

特色でよく知られているのは「DIC」と「Pantone」

じゃあ、特色は誰が編纂して管理しているのかなあ? という疑問を持つ方もおられるかもしれませんね。
特色の編纂・管理、それに続く製造・販売は、色システムやインキ製造に関わる企業などが行ってます。彼らが、色を体系化し番号を割り当て特色を編纂しています。
「特色」といっても種類がありますが、日本では「DIC」と「Pantone」がよく知られています。Adobeのデザインソフトでも、スウォッチにDICやPantoneを入れることができるようになっていますね。実際、デザインの実務上でもよく使うので大助かりです。
DICとPantoneはこのようにデザインソフトのシステムに組み込まれている一方、実際に手に取り参照することができる現物として、見本帳やカラーチップが市販されています。大き目の画材屋さんのデザイン用品コーナーでなら、DICやPantoneのカラーチップを見かけたことがある方もおられるかもしれませんね。

下のようなデザインツール、見かけませんか?

DICのカラーチップ。第15版。少々古いです。
Pantoneのカラーチップ

このように、見本帳やカラーチップの現物があるのには、理由があります。前回も触れしましたが、モニタと印刷物の色は基本的に異なるからです。モニタは現物の仮の姿に過ぎないということです。なので、デザインの実務においては、入稿の際は入稿データの他にカラーチップも一緒に印刷会社に渡す機会もあります。ただ、入稿といってもいわゆるネットプリントなどであれば、カラーチップを渡すという作業は省略されています。

 

DICは「DIC株式会社」のカラーシステム

日本国内でのデザインワークにおいては、DICは最も使われる特色の1つではないでしょうか? デザインのジャンルにもよりますが、国内生産ならば、特色にDICを使うことは多いです。
DICは「DIC株式会社」が管理するカラーシステムで、色見本にまとめられ、デザインの実務で活用されています。色見本は、ビビッドな色から淡い色まで揃っていて、グレイッシュトーン、また、日本の伝統色、フランスの伝統色、中国の伝統色、といったシリーズもあります。合わせて、2,000色以上からなります。
「DIC株式会社」は、元は「大日本インキ化学工業株式会社」という企業でした。活動歴が長いデザイナーなら、「大日本インキ」の方が馴染みがあるかもしれませんね。今は樹脂製品や化学マテリアルの製造も行うなど、幅広く事業を展開していますが、旧社名が示すように、印刷インキを製造・販売する企業としてスタートしています。かねてから、日本のクリエイティブ業界を支えてきた企業の1つです。
DICの色見本が販売開始となったのは、1968年ですが、田中一光さん、勝井三雄さんらが監修をされています。グラフィックデザインの業界では、言わずと知れた方々です。DICは、デザイナーの声をしっかり取り入れて開発されたということが解ります。

 

Pantoneは「Pantone社」が編纂した国際的な特色

日本国内ならDICですが、国外で印刷物やグッズを製造する時は、特色はPantoneが使われることがあります。企業のコーポレートカラーやブランドのカラー、キャラクターのカラーについてはPantoneの色指定がされていることもあります。例え国内での製造でも、デザインのジャンルによっては、DICばかりでなくPantoneの使用頻度も高くなりつつあります。
Pantoneはアメリカに本社がある「Pantone社」が編纂した特色で、DICと同様、体系化されたカラーシステムとなっています。こちらも、見本帳やカラーチップがあります。日本から中国に入稿する際にも使われるなど、国際的な特色としての一面もあります。
なお「Pantone社」は、今は「エックスライト社」の子会社になっています。

 

まとめ

・特色は色1つ1つに色番号が割り当てられている印刷用の単色インキのこと
・特色は体系化されたカラーシステムとなっている
・日本国内では特色の中でもDICとPantoneの使用頻度は多い

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBES です。10年以上前だと記憶していますが、私はティファニーのネックレスをプレゼントされたことがあります。ネックレスはエメラルドグリーンの箱に入ってやって来ました。「ティファニーブルー」とも呼ばれるこの爽やかな色が気に入って、ネックレスの収納ケースとして、今でも大事に使っています。
初音ミクのキャラクターのテーマカラーもエメラルドグリーンですね。髪や目、コスチュームに、取り入れられています。
私も好きな色ではありますが、この青緑系の色は、実はデザイナー泣かせの色でもあります。

 

CMYKでは再現が難しいエメラルドグリーン

エメラルドグリーンも含まれる、俗に「青緑」と呼ばれる系統の色は、オフセット印刷のCMYK4版掛け合わせで再現しようとする時は注意が必要です。彩度がずいぶん低くなってしまうため、パソコンのモニタ画面で確認した色と比べてくすんだ印象になってしまい、刷り上がった印刷物のコレジャナイ感がハンパない、などという状況に陥りがちです。
そもそも以前にもお話していますが、エメラルドグリーンは、カラーモードをRGBからCMYKに変換しただけでも彩度が落ちてけっこう置き換わってしまうということでした。とにかく、CMYKで再現するのが難しい扱いづらい色と言えます。
(※RGBやCMYKのカラーモードのお話について忘れてしまっていたら、「色の基本(1)色の基本(2)」あたりを読み返して見てください。)

私物のティファニーのネックレスの箱。大事にしてます。

 

CMYKの再現が難しければ特色を使う

でも、写真に映っているティファニーのネックレスの箱の色は、彩度が保たれていてくすんだ印象はないよね?という感想をお持ちの方もおられるかと思います。確かにそうですね。これにはちょっとした理由が考えられます。
ティファニーの箱の印刷には、どうも特色が使われているようなのです(写真の箱は厳密には特色を印刷した紙が箱に貼つけられている)。CMYKの4版掛け合わせでは、あのような鮮やかなエメラルドグリーンを再現できない一方、特色になら、あのようなエメラルドグリーンはありますし。・・・ということから考えれば、ティファニーの箱はCMYKで印刷していないことは予想がつきます。目を凝らしても網点が見あたりません。これは十中八九、特色と考えられるでしょう。
ティファニーほどの伝統あるブランドなら、通常はブランディングの課程で色指定を行うものなので、コーポレートカラーとして特色の指定色があるはずですし。日本国外に本社があるブランドなので、Pantoneあたりの指定になっていそうですね。
もしくは、専任の印刷会社さんに「ティファニーブルー」を特色として作ってもらっているかもしれません。企業によっては、独自のコーポレートカラーを専任の印刷会社さんに作ってもらっている場合があります。私も、以前に、ある印刷工場の見学に行った際、そういった特色を見せていただいたことがあります。

 

デザイナー泣かせだが個性的なカラー

このように、オフセット印刷においては、鮮やかなエメラルドグリーンのようなCMYKの掛け合わせでは再現できない色がありますが、特色で補える時もあります。
そんな時は、いつも特色が使えれば良いのですが、どうしてもCMYKでエメラルドグリーンを再現しなければならない場合もあります。特色を入れればそれだけ版が増え、印刷代も上がることになります。印刷経費を抑えるため、出来る限りCMYKの4版のみを用いた印刷にしようという場合もあるわけです。そんな場合は、発色が良い紙を使用して印刷するという手段もありますので、いかにそれっぽい色に見えているかという部分で、試案を重ねていくしかありません。迷ったらコート紙です。安めで発色が良いです。
ともかく、エメラルドグリーンは扱うには技術も知識も必要な色です。それゆえに、ブランドカラー、キャラクターのテーマカラーとしては採用されにくい色かもしれません。しかし、だからこそ世の中にありふれた色となりにくく、他と差異化ができて個性が出ます。難しい色ですが美しいですし、チャレンジしてみる価値がある色です。

 

モニタで映える初音ミクのエメラルドグリーン

彩度が保たれた状態の、鮮やかなエメラルドグリーンは美しいですね。特にモニタでこそ個性的で印象に残ります。
モニタで見る時の初音ミクのエメラルドグリーンは、印刷で再現できないRGBモードの光の媒体にしかない色です。青緑系でああいった彩度が高い色は、印刷では再現できない、極めて電子的なカラーということも言えます。それをキャラクターのテーマカラーにしたのは、初音ミクを見る媒体についてモニタ等の光の媒体をメインに想定しているからかもしれません。
なんとも、今どきのボカロアイドルっぽい現象ですね。

 

初音ミクのエメラルドグリーン、特色なら?

試しに、RGBモードの初音ミクのエメラルドグリーンに、特色をあててみましたよ。色チップを見て確認しました。

ポンチ絵で失礼します。

初音ミク

この絵なら、「DIC42」もしくは「DIC2162」でしょうか?
ご参考まで。

 

まとめ

・ティファニーや初音ミクのエメラルドグリーンは、厳密にはCMYK4版の印刷では再現できない
・エメラルドグリーンは再現が難しい色だからこそ独特で、チャレンジしてみる価値あり
・初音ミクのエメラルドグリーンは、特色なら「DIC42」もしくは「DIC2162」ぐらいだろうか?

ではまた!