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こんにちは。ANGEL VIBESです。タイポグラフィの基本は、「大・中・小」の塊・文字の大きさ・そのレイアウト、にあります。だいたいそんな感じです。それは、前回までの説明で明かしたとおりです。こうした「大・中・小」を意識すれば、タイポグラフィは自ずといい感じになっていくと思います。
他に、タイポグラフィの基本について言っておこうと思うのは、文字のレイアウトには基本のパターンがあるということです。レイアウトのパターンは、基本を覚えれば応用が効くので、とりあえず覚えてしまうのもアリですね。それに、レイアウトを考えすぎて頭の中がカオスになってくることもあるので、そんな時は基本を見直すことがイメージの整理に役立ちます。
といった事情もあるので、今日は、基本のレイアウトはどうやって覚えるの? というお話をしておきます。

 

タイポグラフィには基本のレイアウトがある

基本のレイアウトを覚えるにあたり、ちょっと解説しておきますね。
タイポグラフィには、ジャンルによって定番のレイアウトがあります。カタログならこんな感じとか、書籍の表紙なら、雑誌の表紙なら、・・・と、定番のレイアウトがあります。なぜ、そんな基本形があるかといえば、そのジャンルの媒体が持つ機能に則ってタイポグラフィがなされているからです。
コンビニの雑誌の棚を見てみてください。雑誌の多くは雑誌のタイトルが上部に位置していませんか? これが基本形だったりするわけですが、こういったレイアウトにしているのは何故だと思います? これは雑誌の棚の形状に合わせていて、タイトルが上部にあれば、後ろの段にあってもタイトルだけは見えるからです。雑誌の表紙は「コンビニの雑誌棚でもタイトルが見える」という命題に応えた機能を付与するレイアウトとなっています。このように、「機能」がタイポグラフィの基本形を形作っている面もあるのです。
カタログなども、定番の基本形がありますね。上部にタイトルがあって、その下にマスがずらりと並んで、そこに商品とその説明がついているような。商品を探す時に、見やすいということです。
もし、デザインするジャンルが決まっているなら、そのジャンルの定番のレイアウトを調べてみてから、デザインを進めるという手段もあります。デザインを考えているうちに、なんだか頭の中が混乱してきてしまった・・・などという方も、いったん定番のデザインを調べてみる・思い出してみる、という作業でイメージが整理されてくるでしょう。

 

レイアウトの基本形を調べてみる

自分がデザインするジャンルの基本形のレイアウトを調べるにあたり、まず、デザインするジャンルの資料を集めましょう。「タイポグラフィの基本(1)」で、資料集めに出かけましたね。同じように、持ち帰っても良いリーフレットやカタログで、参考になるデザインがあれば持ち帰ってしまいましょう。持ち帰れない書籍等は、インターネットで画像検索してみましょう。ピンタレストの活用も良いでしょう。
その他、図書館でデザイン年刊や「P・I・E BOOKS」あたりの作品集を見るという手段もあります。資金に余裕があれば何冊かの作品集を購入するのもおススメします。良い作品集は一生もので、私も数十年前に購入した資料集は、必要に迫られて定期的に見返しています。「P・I・E BOOKS」はセンスが良くておススメです。

「P・I・E BOOKS」の作品集「corporate profile graphics」の中ページ。
私が所持する内の一冊。

資料を眺めているうちに、デザインのジャンルによって、だいたいのデザインフォーマットがあることに気づきはじめると思います。デザインのフォーマット=テンプレートと考えても差し支えないでしょう。これがジャンルによるタイポグラフィの基本形です。この基本形を覚えておけば、何かと役に立つ機会があろうかと思います。

 

レイアウトをサムネイルに書き出してみましょう

そういったタイポグラフィの基本形が見つけられたら、デザインのフォーマットとして覚えてしまいましょう。
覚え方はこんな感じで。手書きで構いませんので、サムネイルとして書き出してメモします。ネタ帳に書いておけばOKです。デザインする時にそのメモを見返せば、フォーマットを思い出せますね?
インターネットの検索結果に並ぶ小さな画像も「サムネイル」と言いますが、「サム」は「親指」、「ネイル」は「爪」で、デザインを簡潔に表した小さなラフ・スケッチのことです。デザインのフォーマットを覚えるなら、いっそ細部を切り落として単純化したサムネイルをメモしていけば、頭に入って行きやすいです。自分で解れば良い程度のラフでいいので、メモの習慣をつけましょう。
「手書き」とは言いましたが、別にイラレで書いても構わないですからね。要するに、情報を単純化し、フォーマットとして覚えておくことが重要なんです。

サムネイルの例。だいたい解ればOK

ちなみに上のサムネイルは「ベルギー奇想の系譜展」のチケットです

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

タイポグラフィにはジャンル別に基本のフォーマットがあるという話をしてきたわけですが、ただ、その基本形を厳密に守らなければならない、ということでもないですので。あまりそこは考えすぎなくて大丈夫です。時と場合を見計らうことができるようになれば、アレンジして、基本形を崩していったって良いんですよ。

 

まとめ

・タイポグラフィにはジャンル別に定番のフォーマットがある
・基本のタイポグラフィを覚えるためには、まずデザインするジャンルの資料を集める
・そして、レイアウトをサムネイルとして書き出しておく

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。タイポグラフィにはチェックポイントがありましたね。復習しますよ。
 ・「塊」とその配置
 ・構成要素の「大・中・小」
 ・文字の大きさ
これらがうまくできていればタイポグラフィは成立するという、基本中の基本の要点でしたね。
さて今日は、この要点をふまえ、例の「ベルギー奇想の系譜」のチケットについて分析してみます。

 

ちょっとチケット全体を眺めてみましょう

例の「ベルギー奇想の系譜」のチケット全体を、眺めてみましょう。

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

おおまかに、左右の塊によって成り立っているレイアウトだと解ると思います。
左側にこの展覧会を象徴する奇妙な味わいの絵画、右側に展覧会の題名を始めとした文字情報。オーソドックスですが、スッキリと解りやすい配置ですね。
「奇想」のイメージは、左側の絵画によって伝わってきますね。ぎっしりと細かく奇妙な何者かが描かれていて、まずこの絵画で「奇想」のイメージが解ります。
そして、塊の大きさの観点から分析してみますが、レイアウト全体から見て、左側の絵画は「大」、右側の文字情報は「中・小」の塊と言えるでしょう。
チケットを見てください。ぱっと見、まず左側の絵画が目に入り、そして展覧会の題名に目が行きますね。それから、開催期間やその他の記載というふうに、自然に視線が誘導されませんか? 伝えたい情報の重要度に従って、グラフィックの塊を「大・中・小」にしてあることによる効果です。

 

文字情報部分のタイポグラフィを分析してみる

ここで、右側の文字情報部分に注目してみたいと思います。
まず文字の組み方についてですが、見事な箱組みですね(文字の両端を揃えて、シルエットを正方形・長方形に見せるこのような文字の配置の仕方を「箱組み」と言います)。文字情報がまとまって見えます。
文字情報部分がこうしたまとまった塊になっていることによって、左側の絵画に対し右側は文字情報なんだなと、ビジュアルで、まずそう認識ができると思います。見ている人に、そう認識させ、スッキリと情報を理解させるための効果的なレイアウトとも言えますね。

 

文字情報部分の「大・中・小」の塊

今度は、右側の文字情報部分での、「大・中・小」の塊の大きさの観点から分析して
みたいと思います。
先ほど、レイアウト全体から見て、左側の絵画は「大」、右側の文字情報は「中・小」の塊と言える、と述べました。確かに、右側の文字情報部分は全体のレイアウトから見て「中・小」の塊ですが、この右側の文字情報部分のみ分析すれば、この部分も「大・中・小」の塊から成り立っていることが解ると思います。

文字情報も「大・中・小」になっていますね

文字情報の中でも最も重要な部分は、この展覧会の題名です。このチケットでいうと、「ベルギー奇想の系譜」がそうです。展覧会の題名を大きく太くして目立たせてありますね。左側の文字部分の中では「大」の塊です。
次に目立たせたいのは、展覧会のテーマや開催期間・場所です。このチケットでいうと「ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」や「7.15→9.24」や「Bunkamura ザ・ミュージアム」、英文の「Fantastic Art in Belgium」のあたりです。展覧会の題名の次に目立たせてありますね。このあたりが「中」の塊です。
他は詳細情報で、重要情報の後に見る部分です。このあたりは「小」の塊となっています。
文字情報部分のみを分析してみると、このように、伝えたい情報の重要度に従って「大・中・小」の塊になっています。これにより、情報の重要度に従って、視線が自然に誘導されますね。

さらに文字部分の塊をそれぞれ分析してみます。
「大」の塊「ベルギー奇想の系譜」は、「ベルギー」をゴシック体の太字にして「奇想の系譜」よりも少し目立たせています。この展覧会は、ベルギーからアートがやって来たよという部分が重要で、「ベルギー」を目立たせたのでしょう。こうしたメリハリによって、情報がさらに伝わりやすくなりますね。
他にもよくよく観察していくと、細々としたメリハリがあります。「中」の塊「7.15」の隣の「(土)」や、「9.24」の隣の「(日)」といった曜日の要素が小さくなっていたりもします。

 

そして、「遊び」がある

このチケットのタイポグラフィは、上に述べたように、分析すればする程に利に適っていることが解ると思います。情報の重要度に従い目線が誘導される、良く出来たタイポグラフィですね。
こうした利に適った部分ばかり見てきましたが、そうでもない部分もあります。そしてその、利に適わないとも言える部分によって、このタイポグラフィはさらに秀逸になっています。「利に適わないとも言える部分」、それは「遊び」です。
このタイポグラフィにおいての「遊び」は、英文の「Fantastic Art in Belgium」に象徴されます。いわば無くても良い部分で、それなのに、文字部分の中では展覧会の名前の次に目立たせています。
そういった意味では、全く利に適っているとはいえません。しかし、この部分があるとないとでは、見た目に差がついてしまいます。この「Fantastic Art in Belgium」があることで、おしゃれ感が増しますね。このおしゃれな部分がないと、情報が伝わりやすい一方で、おそらく退屈なタイポグラフィとなってしまったことでしょう。せっかくの、渋谷のBunkamuraで開催される展覧会チケットです。おしゃれ感があって退屈させないタイポグラフィがふさわしいですね。

 

まとめ

・情報の重要度に従い塊を「大・中・小」にして配置する
・文字は重要部分を大きくしたり太くしたりすると解りやすい
・遊びがあるタイポグラフィだとなお良し!

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。私の推しのタイポグラフィも含めお話してきましたが、皆さんは気に入ったタイポグラフィのコレクションはできましたか?
こんなタイポグラフィをやってみたい! というデザインが、そろそろ見つかってきたかと思います。そこまでできたら、そのタイポグラフィがどういった成り立ちになっているか分析してみましょう。そうすれば、タイポグラフィの腕は段々身について来ますよ。

 

分析してみましょう

いい感じだと思ったタイポグラフィを見つけたら、そのレイアウトを分析してみましょう。
ちょうど、いい感じのタイポグラフィがあるので、例にしてみますね。写真は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ベルギー奇想の系譜〜ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで〜」という展覧会のチケットです。使用済みなので右側が切り取られてますが、いい感じだと思います。

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

どんなレイアウトでも、まずこの部分をチェックしてみてください。
・「塊」とその配置
・構成要素の「大・中・小」
・文字の大きさ
タイポグラフィは上記の点がうまくできているかどうかが基本中の基本、これらがうまいことできれば、基本のデザインは成立します。

写真の「ベルギー奇想の系譜」チケットのタイポグラフィについて分析してみたいと思いますが、その前に、これらのチェックポイントが何なのかついて、説明しておきますね。

 

「塊」とその配置

タイポグラフィは文字の「レイアウト」によって成り立っています。「レイアウト」は文字も含むグラフィックの要素(写真やイラスト等)の配置・構成です。ポスターなどをよくよく見てみると、画面においてグラフィックの要素がいくつかの「塊」になっており、「塊」が配置されていることに気づくでしょう。
配置された文字要素の「塊」をよくよく観察してみてください。タイトル周り、コラム、キャッチーコピーなど、それぞれの伝達内容によって「塊」になっていませんか? このように、文字要素を伝達内容によってそれぞれの「塊」にして画面を構成するのは、視覚的に伝わりやすくするためです。例えば、重要事項〜ちょっと重要な事項〜知りたい人だけ読む詳細説明、というのがぱっと見で解るビジュアルであれば、情報が理解しやすくなるということです。

 

構成要素の「大・中・小」

上に述べたように、レイアウトされているグラフィック要素の「塊」は、それぞれの伝達内容によってまとまっています。
では、この「塊」の大きさに着目してみてください。「大・中・小」に分けられていますね。
さらに「大・中・小」について「塊」の中を観察してみましょう。まず、グラフィック要素の「塊」の大きさは「大・中・小」になっていますが、その「塊」の中で、文字の太さや大きさに強弱があり、さらに「大・中・小」があることに気づくと思います。

 

文字の大きさ

画面の文字全体を観察してみてください。文字の大きさにも「大・中・小」の強弱がありますね。強調したい文字部分は大きさを大きくしたり太くしたりします。強調しない部分は、逆に小さくしたりします。このように、文字に視覚的な強弱をつけることで、ぱっと見で伝わりやすくなります。
そして、文字部分の用途によっては、それに合った適切な大きさになっていることも必要です。雑誌などの例えば何かのコラムといった文章中心のページでは、本文として読みやすい級数(=Q数)にしたりもします。平均値はだいたい13級(およそ9ポイント=9pt)ぐらいです。本文を13級とすると、写真につけるキャプションは10級以下ぐらいが無難です。

 

文字の大きさを測る

本当かな? と思う方は、そういった雑誌、気になったリーフレットやポスターなどの文字の大きさをいろいろと測ってみてください。
ただ、AdobeIllustratorなどDTPのデータなら調べられるとして、紙に印刷された文字はどうすればいいのだろう・・・という方、ご安心を。写植級数表で測れますよ。写植級数表は、透明なフィルムにマスが印刷されている道具で、DTPが始まる以前から文字の大きさを測る道具としてデザイン業界などで使われて来ました。今となっては、この写植級数表が用いられる場面は、少なくなってしまったでしょうけれども、まだまだ役に立つ道具です。
私が持っているのは、IZUMIYA製(株式会社いづみや=現在の株式会社Too)。社名が変わり、Too自体ももう製造していないようですが、レター社など他のメーカーの写植級数表は現在も売られています。
 

IZUMIYA製の写植級数表。ずいぶん黄ばんでしまいましたが、まだ持っています

 

文字の上に重ねて大きさを測ります。1行目は16級程度ということが解ります。

 
さて次は、「ベルギー奇想の系譜〜ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで〜」のタイポグラフィについて具体的に分析したいと思いますが、それは次回!

 

まとめ

タイポグラフィでチェックする部分は
・「塊」とその配置
・構成要素の「大・中・小」
・文字の大きさ

ではまた!